携帯型輸液ポンプの使用について
投与方法について
ビーリンサイト®点滴静注用35μgの携帯型輸液ポンプによる投与について
ビーリンサイトは、「輸液ポンプ」または「携帯型輸液ポンプ」を用いて主に院内で投与することが可能でした。
この度、令和6年6月1日施行の診療報酬改定により、『在宅腫瘍化学療法注射指導管理料』、『携帯型ディスポーザブル注入ポンプ*1加算』及び『注入ポンプ加算』の算定要件が改定されました。そこで今回は、携帯型輸液ポンプを用いた投与方法についてご紹介します。
「ビーリンサイト®点滴静注用35μg」を用いた在宅投与を実施される際は、診療報酬の改定内容をご確認ください*2。
輸液ポンプと携帯型輸液ポンプの違い
ビーリンサイトの投与に使用できる医療機器として、輸液ポンプと携帯型輸液ポンプがあります。輸液ポンプは点滴台に設置する必要があるため、活動範囲に制限がかかります。一方、携帯型輸液ポンプは、ポンプを携帯しながら投与が可能で活動量が上がります。
ビーリンサイトの投与は、輸液ポンプと携帯型輸液ポンプから選択可能です。
輸液ポンプ
- 輸液ポンプの場合は、点滴台へ設置して使用します。
- 輸液ポンプを使用する場合はコンセントにて充電が必要です。
携帯型輸液ポンプ
- 携帯型輸液ポンプの場合は、ポンプを携帯しながら投与が可能になります。
- 携帯型輸液ポンプを使用することで、活動量が上がります。
投与スケジュール
ここからは携帯型輸液ポンプの概要について説明します。携帯型輸液ポンプでビーリンサイトを投与する場合、投与時間を24、48、72、96時間に設定することができます。例えば、週2回で平日に輸液バッグまたはカセットを交換したい場合は、72時間と96時間投与を組み合わせます。また、投与時間によって輸液バッグまたはカセット内の薬液の濃度が異なるため、注入速度の設定が変わります。
- ビーリンサイトの投与時間は24、48、72、96時間に設定することができます。
- 輸液バッグまたはカセット交換の頻度が週2回の場合、下図のようになります。
交換頻度の一例
-
交換日を平日に設定するためには、72時間と96時間投与を組み合わせる必要があります。
- 連休等がある場合は、ご施設で投与スケジュールを調整してください。
投与時間 | 注入速度 |
---|---|
24時間 | 10mL/時間 |
48時間 | 5mL/時間 |
72時間 | 3.3mL/時間 |
96時間 | 2.5mL/時間 |
準備する医療材料
続いて、携帯型輸液ポンプで投与する際に必要な医療材料について説明します。
- 適切な携帯型輸液ポンプを選定し、院内にある場合は当該科で使用可能であるか確認してください。
- 院内に適切な携帯型輸液ポンプがない場合は、購入もしくはレンタルを検討してください。
- 適切な医療材料を選定してください(250mLのカセット、無菌フィルターなど)。
- 必要に応じて携帯型輸液ポンプメーカーもしくはレンタル会社と連携してください。
携帯型
輸液ポンプ
エクステンション
チューブ
外付けフィルター
逆流防止弁
ビーリンサイトの投与に使用できる携帯型輸液ポンプは複数あり、ポンプの種類によって必要な医療材料が異なります。主な携帯型輸液ポンプの特徴については、後述の「携帯型輸液ポンプのご紹介」をご確認ください。
携帯型輸液ポンプのご紹介
主な携帯型輸液ポンプを3つご紹介します。院内の機材取り扱い状況や患者さんのニーズに合わせて適切な機材が選択できます。操作方法などの詳細は該当の医療機器メーカーにご確認ください。
重量 | 392g(単3形アルカリ乾電池2本、空の100mLメディケーションカセットを含む) |
電源 | 単3形アルカリ乾電池×2本、ACアダプタ |
作動時間 | 約112時間(10mL/時で送液した場合) |
投与速度 | 0~50mL/h(0.1mL/hステップ) |
投与精度 | ±6% |
薬液の 充填方法 |
カセット、輸液バッグ |
備考 | メーカーによる本体販売は終了 PCA(患者自己調節鎮痛法)が可能 |
2023年9月時点
デルテックポンプ CADDシリーズ電子添文より
重量 | 595g(単3形アルカリ乾電池4本を含む) |
電源 | 単3形アルカリ乾電池×4本、ACアダプタ |
電池寿命 | 124時間(持続投与5mL/h、バックライト照度3の場合) |
投与速度 | 0~100mL/h(0.1mL/hステップ) |
投与精度 | ±6% |
薬液の 充填方法 |
カセット、輸液バッグ |
備考 | 専用ソフトウェアによる設定の簡略化、見やすい画面、わかりやすい操作ガイド機能あり PCA(患者自己調節鎮痛法)が可能 |
2023年9月時点
CADD-Solisポンプ電子添文より
重量 | 約140g(ドライブユニット) |
電源 | 内蔵バッテリ(Li-ion電池)、ACアダプタ(無線充電器付属) |
バッテリ 駆動時間 |
約4日間(新品バッテリで周囲温度25℃、6時間以上充電、流量5.0mL/hの場合) |
投与速度 | 0.1~30.0mL/h(0.1mL/hステップ) |
投与精度 | ±6%(1.0mL以上の一定流量における1時間ごとの精度) |
薬液の 充填方法 |
専用バッグ(エイミーMPユニット:容量100mL、300mL) 輸液バッグ+びん針タイプ(エイミーMPユニットスパイク) |
備考 | 投与設定や輸液状況の確認はすべてスマートフォンのアプリケーション(エイミーズウィンドウ)により、専用の通信モジュール(コムタッチ)を介して行う エイミーMPユニットとエイミーMPユニットスパイクは特定保険医療材料となっており、保険請求が可能 |
2023年9月時点
クーデックエイミーPCA電子添文より
使用手順
携帯型輸液ポンプで投与する場合の使用手順は、大きく分けると6ステップあります。
ステップ
ビーリンサイト輸液バッグの調製
薬液を専用容器(カセット/輸液バッグ)へ充填
携帯型輸液ポンプ、ルート類、専用容器の接続
携帯型輸液ポンプの設定(流速や投与予定量等)
ルートのプライミング
患者さんへ接続
外泊・外来治療時の院内連携と必要な準備
外泊・外来治療へ移行する場合は、医師、薬剤師、看護師、医事課などの院内多職種及びポンプメーカー、レンタル会社などの院外担当者間で連携を取ることで、治療を円滑に進められます。
患者さん/職種 | 主な役割(一例) |
患者さん | 日常生活上の注意点・緊急時の対応方法の理解 |
医師 | 各職種、院内の関係部署へ相談 |
薬剤師 | 必要物品の準備、レジメン作成、薬液の調製・充填 |
病棟看護師 | 必要物品の準備、患者指導、外来との情報共有、ポンプの操作、カセット交換 |
外来・外来化学療法室看護師 | 物品管理、ポンプの操作、カセット交換 |
救急外来医師・看護師 | 緊急時の対応、当該科との連携 |
医事課 | 診療報酬の確認 |
※連携が必要な職種については各ご施設でご検討ください。
ビーリンサイト®点滴静注用35μg外泊・外来治療に向けて
外泊・外来治療に向けてのチェックリスト
外泊・外来治療へスムーズに移行するためのチェックリストをご用意しておりますので、ご活用ください。
外来投与時にはの項目も確認してください。
チェック/実施者 | 医療機器の準備 |
---|---|
/ ( )
|
適切な携帯型輸液ポンプを選定し、院内にある場合は院外持ち出しが可能であるか確認する |
/ ( )
|
院内に適切な携帯型輸液ポンプがない場合は、購入もしくはレンタルを検討する |
/ ( )
|
適切な医療材料を選定する(250mLのカセット、無菌フィルターなど) |
/ ( )
|
必要に応じて携帯型輸液ポンプメーカーもしくはレンタル会社と連携する |
チェック/実施者 | 院内環境の整備と連携 |
/ ( )
|
携帯型輸液ポンプ使用時のレジメンを登録する(必要時) |
/ ( )
|
薬液調製、プライミング、携帯型輸液ポンプの設定を実施する部署を決める |
/ ( )
|
関係職種が副作用、携帯型輸液ポンプの使用方法を習得する(必要時、説明会・勉強会の実施) |
/ ( )
|
携帯型輸液ポンプや医療材料の保管場所を決定し、関係部署に周知する |
/ ( )
|
緊急時の対応方法を検討し、関係部署に周知する |
/ ( )
|
算定可能な診療報酬について医事課に確認する |
/ ( )
|
外来投与の実施方法について決める(誰がどこで輸液バッグやカセットを交換するか) |
/ ( )
|
携帯型輸液ポンプ投与の開始時間と外来受診時間を調整する |
/ ( )
|
病棟から外来関係部署へ引継ぎを行う |
チェック/実施者 | 患者さんの治療体制 |
/ ( )
|
日常生活上の注意点やトラブル時の対応について説明する |
/ ( )
|
緊急時の連絡先について説明する |
/ ( )
|
副作用の観察ポイントについて説明する(体温測定や症状観察など) |
/ ( )
|
入院中に携帯型輸液ポンプでの投与を行い、操作方法を説明する |
/ ( )
|
患者さんのサポート体制を確認する(家族、学校、職場など) |
/ ( )
|
患者さんが週2回の外来受診および緊急時の受診が可能であることを確認する |
外泊・外来治療に関する資材のご紹介
外泊・外来治療に向けて詳細を解説した資材もご用意しています。
医療従事者用はビーリンサイト投与の際に、患者用は患者さんへの説明の際に補助資料としてご利用いただけます。
携帯型輸液ポンプの使用を検討される際にはアムジェン株式会社またはアステラス製薬株式会社の担当者までご連絡ください。
『ビーリンサイト.jp』はアムジェンが運営する医療関係者向け情報サイトです。
こちらのページでは、抗悪性腫瘍剤/二重特異性抗体製剤ビーリンサイト(ブリナツモマブ)の携帯型輸液ポンプの使用について:投与方法についてをお届けいたします。